magic mirror    《筆》著糸町名
-----------------------------------------------------------


 戯れに買ってきた手鏡を覗くと、そこには見覚えがあるような気がしないでもない女性の姿が映っていた。

 振り返る。俺の後ろには誰も居ない。

 もう一度鏡を覗く。そこにはやはり、どこかで見たような女の顔が映っている。

 俺はその女の顔をじっくり見つめると、不意にピンときて、窓を開けて前の通りを歩いている人たちを鏡で捉えてみた。

 すると思った通り。男は女に、女は男となってその鏡に映されている。

 ――面白いものが手に入った。この鏡は文字通り、捉えた人の性別を反対にして映すのだろう。

 俺は肩を揺らしながら、最近できたばかりの彼女に電話する。

 しばらく経つと、彼女が家に来た。

「ほら、面白いものが手に入ったんだ。ちょっとコレ覗いてみなよ」

 彼女が鏡を覗き込むと、そこにはちゃんと見覚えのある彼女の姿が映っていた。





戻る

inserted by FC2 system